毒殺協奏曲

毒殺協奏曲
毒殺協奏曲
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原書房
売り上げランキング: 135,512

致死量に詳しすぎる女、正統派の毒殺、ネットで知り合った女、身近すぎる毒、毒より恐ろしい偶然…サスペンスから本格まで、一冊に閉じ込めたバラエティ豊かな毒物語集。


毒殺といえばイメージ的には女子供の専売特許で、
まさしくここに登場するのも非力でか弱い者たちばかり。

お気に入りはコメディタッチの『猫は毒殺に関与しない』
主人公キャラの庶民的な切実さが絶妙の語り口でコント並におもしろかった。
で、結局SNSに悪口書き込んでたのって誰だったのかしらん。

ちなみにわたしはLINEってやつがどうも苦手なので、もしも今の時代に若者だったら
こんな四六時中見張られてるような付き合いをせにゃならんかったかも、
と思うとつくづく今の歳で良かったと胸をなでおろすのであった。

Posted by K@zumi

月の扉

月の扉 (光文社文庫)
月の扉 (光文社文庫)
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石持 浅海
光文社
売り上げランキング: 23,441

週明けに国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港で、ハイジャック事件が発生した。3人の犯行グループが、乳幼児を人質にとって乗客の自由を奪ったのだ。彼らの要求はただひとつ、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」石嶺孝志を、空港滑走路まで「連れてくること」だった。緊迫した状況の中、機内のトイレで、乗客の死体が発見された。誰が、なぜ、どのようにして―。


月は衛星ではない

あれは空にあいた穴だ

向こうの世界の光が穴からもれているから

光って見えるのだ


そういったのは丸尾末広氏だったかしら。

三人のハイジャッカーによって乗っ取られた航空機。
その機内トイレで起こった不可解な殺人。犯人は誰か?その方法とは!?

あり得ないシチュエーションで巻き込まれる人々と、
一筋縄ではいかない変化球な密室劇は石持作品のオハコやね。
緊迫のクライムサスペンス。
哀しすぎる動機と、座間味くんのロジカルな推理に打ちのめされてくらくらする。
静かに心に沁みいる傑作。


やー。石持センセイ、ますますファンになってしまったよ。
ひょうひょうとしつつも熱い男、偏狭でキレ者の座間味くんがええキャラしてる。
あの真壁が彼に絡んだのはもう運命なんやね。

人が夢みると書いて「儚い」となる。彼らの魂は救済されたのだろうか。

Posted by K@zumi

ダンデライオン

ダンデライオン (角川文庫)
河合 莞爾
KADOKAWA/角川書店 (2016-07-23)
売り上げランキング: 227,115

東京の山間部、廃牧場のサイロで、16年前に失踪した女子大生・咲の死体が発見される。咲は胸を鉄パイプで貫かれ空中を飛んでいるようだった。翌週には、湾岸の高層ホテル屋上で殺人事件が発生。犯人は空を飛んで逃げたかのように姿を消していた。警視庁捜査第一課の鏑木班は、二つの事件に公安部の影を感じながらも、密かに捜査を進める。やがて、咲がかつて在籍していた「タンポポの会」という環境サークルにたどり着くが―。


だーっ!めちゃくちゃおもしろかった!!
このシリーズは回を重ねるごとにほんとうに尻上がり的にどんどんおもしろくなっていく。

双子が登場するということなので、メイントリックは入れ替えか一人二役か解離性同一性障害かどれかだろうと踏んで、またそれが憎らしいくらいそれっぽく書かれていて、なんかものすごく分かりそうなのにイマイチ繋がらなくて、そのいやらしい焦らされ方が上手いというか、もう悶えちゃう。
そして真相は、なんとそういうことだったか!!!まったくのノーマークだったじゃん!( >Д<;)

まるで空を飛ぶように空中に静止したかに見える遺体。逃げようのない屋上から忽然と消える犯人。
屋上での開放密室のトリックは想像かついたけれど、サイロのトリックはさっぱりわからなかったわ。
だいたいわたし物理苦手なんだよ。(物理だけじゃないケド…)
でもまあこれ(空中浮遊トリック)、理論的には可能なんだろうけど、果たしてそんなにうまく実行できるもんなんかなぁ?ギモン。とはいえ小説はとおおおってもおもしろかったんだから別にイイんだけどね☆

今回は公安の巽警視をゲストに迎え、おなじみ特捜班四天王とがっぷり四つで事件に取り組みます。
またしても斉木管理官がしれっと憎まれ役を買って出るなど、このお約束加減がたまらないじゃないの。
鬼原さんとの「おい、タタリ(祟)」「たかし(崇)です。お間違えのないように」っていうベタなやり取りも、例えマンネリといわれようとも、もうこれが出ないと落ち着かないわω

前回でちょこっと触れられていたヒメの苦い過去にも無事に決着がついて、心配性な母さんとしてはほんま心から安堵しました。結果としては辛いけど、でも乗り越えられて良かったね、ヒメ。
ふー。ひさびさの一気読み。満足です。

Posted by K@zumi

ドラゴンフライ

ドラゴンフライ (角川文庫)
河合 莞爾
KADOKAWA/角川書店 (2016-04-23)
売り上げランキング: 56,988

多摩川の河川敷で臓器を抜き取られた猟奇死体が発見された。警視庁捜査第一課の警部補・鏑木率いる4人の特別捜査班は、現場に残されたトンボのネックレスを手掛かりに群馬県の奥地の村へ向かう。やがて被害者は村出身の青年・遊介と判明。20年前に起きた夫婦殺害、ダム建設反対運動、巨大トンボ伝説など、事件との関連が次々と明らかになり混迷を極めていく。鏑木班は遊介の幼馴染みである泉美と建のふたりに事情を聴くが…。


やー。切なかった。これは悲しい。
しかもミスリードがちょっとズルくないか?と思わなくもないが、ラストの「それが自分にとっての真実になる」という言葉ですべてクリアできてしまっているところが上手い!!うーん、でもやっぱりズルい(ω)

臓物を取り除かれ丸焦げになったアジの開きのような変死体が登場するという相変わらずの猟奇的な展開。
トリックも動機もするりと読めそうでイマイチ読めない、その歯がゆい誘導の仕方がもういっそ快感だわン。
キャラクターもさらに円熟味を増し、鏑木班長はお得意のヤマ勘と違和感でぶつぶつ云うし、ヒメは変わらず陽気でかわいいし、冷静で知的ながら意外に熱い漢の澤田も健在。そして正木はオヤジギャグでしか貢献していないように感じるのはきっとわたしの気のせいよね。
クールな管理官タタリと強面の捜一課長鬼原とのビターな関係もナイス。

印象的だったのは、真夜中のダム湖のうえにボートでぷかぷかと浮かびながら鏑木さんとヒメとが交わす会話のシーン。そこで、いつも天真爛漫なヒメにこの闇のように昏く不穏な記憶が秘められているのではないか、というまさかの布石が打たれる。次回作へとファンのハートをさりげなく波立たせる心憎い演出だこと。
静かに揺れるボートとまたたく星くずとかすかな水音がムードたっぷりにせつなく胸を軋ませる。
ああ、いつの日か彼の悲しい呪いが解けたらいいな。


以下、ちょっとネタバレになります。

Posted by K@zumi

デッドマン

デッドマン (角川文庫)
河合 莞爾
KADOKAWA/角川書店 (2014-08-23)
売り上げランキング: 91,763

頭部がない死体、胴体がない死体、右手がない死体…。遺体の一部が持ち去られる猟奇殺人事件が6件連続して発生した。捜査が混乱を極める中、ある日本部に1通のメールが届く。僕は継ぎ合わされた死体から蘇った死人です。僕たちを殺した犯人を見つけてください―。鏑木警部補率いるクセ者揃いの特捜班が前代未聞の謎に挑む。


序盤からぐっと引き込まれる展開。
いきなりの首なし死体登場に不謹慎にも胸は躍ります。その後も次々に発生する部位の欠損した死体。
なかなかの陰惨な事件であるにもかかわらず、その文体はひじょうに軽快で読みやすく絡みつくようなドロドロ感をみごとに感じさせずスピーディーに物語は進んでいきます。
しかも、これ警察小説風ではあるんですけど、キャラクターのセリフ回しはなんだか青春小説をほうふつとするような、ちょっぴり気恥ずかしい蒼さを感じさせます。なんか新鮮。
また「デッドマン」の造形についてはさる有名作品のオマージュでもあるのでしょうね。

全体的にはしょうしょう都合良すぎるような展開で、取ってつけた感はなくはないのだけど、「僕」の視点には緊迫感があってバラバラ殺人とどうリンクしていくのかとてもスリリングでどきどきします。
ぶっちゃけ、ミスリードはあるにしてもある程度の予想はつくわけですが、誰かさんもおっしゃってましたが、やっぱり“謎は解ける方がおもしろい”ですよね!
野球は投手戦よりも打撃戦のほうがダンゼンおもしろいし。(脈略なし)

ベッタベタの設定ながらゴレンジャー並みに安定感のある登場人物。不可思議な謎の提起。めくるめくサスペンス。勧善懲悪なストーリー。これはもう様式美好きにはたまりません。
テンポが良いので肩がこらずにスイスイいける良質のエンターテイメント小説です。おすすめ。

ところで、主人公の鏑木さん。うだつが上がらなくて奥さんに愛想つかされたっぽい設定になっているけれど、彼ってけっこうイイ男よ。穏やかだし、情はあるし、固定観念のないとてもニュートラルな性格。
ヤマ勘だけでやってきたというわりには、真相を見抜く目に長けているし情熱も男気もある。
フツウだと女はこんな男にはヨワいはずなんだよね。これで愛想つかされるんなら、世の中のほとんどのオトコは捨てられるんじゃないのかな。と思っちゃったわ。

Posted by K@zumi

中空

中空 (角川文庫)
中空 (角川文庫)
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KADOKAWA / 角川書店 (2013-07-17)
売り上げランキング: 76,520

何十年に一度、開花するという竹の花。その撮影のために鳶山と猫田は、大隅半島の南端に近い竹茂村を訪れた。そこは老荘思想を規範に暮らすひなびた七世帯の村だった。村人は二十年前に起きた連続殺人事件の、再来におびえながら過ごしていた。そして、怖れていた忌まわしい殺人事件が次々と起こる!!閉鎖された村の異質な人間関係の中に潜む犯人とは!? 横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞の本格ミステリ。


閉鎖された生態系に異物を放りこむと、それまでの均衡や力関係が微妙に崩れる。投入された傍観者は、いわば観客。ミステリアスな竹の花が咲き、観客がそろったところで悲劇の幕は開く――

ヒロインの語り口がとても軽快でさっぱりしてるので、舞台は同じような山深く閉鎖された「結」のような集落でも、横溝先生みたくじめじめとぬかるんだ雰囲気はほとんど感じなかった。
でもってネコさんのせいですっかり勘違い。ンもう!
この辺のミスリードにはやられちゃったなー。思えばあちらこちらに伏線が山盛りだったのにうまく繋げられなかった。終始ネコさんの一人称で語られてるのだから、叙述を疑えよ!自分!!といった感じだ。
んーでもさ、あれらの記述はあとで見返してみてもちょっと卑怯な感じがするんだケド…(負け惜しみ)

物語全体に荘子に関する薀蓄が散りばめられ、そこに竹林の静謐なイメージが重なり合いとても趣きがあった。インターミッションで語られる「かぐや姫」の考察もおもしろかったナ。
ところで、殺人事件の被害者となってしまう「恵」どんの思想には高尚すぎてさすがについていけないところは正直あるけれど、でも彼を死に至らしめた経緯は、わたしはネコさんの推理のほうが恵どんの人となりから少なくとも理解はできるし、キレイだったような気がするなあ。
もっとも最終的には犯人もろとも根本的に動機部分がひっくり返るんだけど、最後に鳶さんから語られた死の真相は、ちょっと考えられないくらい浅はかで俗っぽくて、ああ人って結局こんな風にコントみたいに死んでしまうのかなあと思って、それまで彼が人格者だっただけにすこし憐れだった。

ひとつのコロニーが消滅したラストシーンの描写は、100年に一度の花を咲かせのちに一斉に枯れ果てた竹林の風景にシンクロして、秋風のような寥寥とした余韻を残す。
――中空の村。
その表現がぴったりだ。

また本作とは関係ないんだけど、閉鎖された山里と竹の花で、のがみけいさんの漫画『竹の秋』をふと思いだして読みたくなった。(ふ、古い…)
それと登場人物の名前がややこしくて最後まで覚えきれなかったよー。

Posted by K@zumi

ついてくるもの

ついてくるもの (講談社文庫)
三津田 信三
講談社 (2015-09-15)
売り上げランキング: 203,421

実話怪談の姿をした七つの怪異譚が、あなたを戦慄の世界へ連れていく。薄気味の悪い男が語る夜毎の恐怖(「夢の家」)、廃屋から人形を持ち帰ってしまった私の身の上に次々と……(「ついてくるもの」)、同居人の部屋から聞こえる無気味な物音の正体は……(「ルームシェアの怪」)。“取り憑かれる”ホラー短編集。


子どものころによく殺人鬼に追いかけられる夢を見た。
ものすごく怖くて当時は完全に悪夢だと思っていたが、調べてみるとコレって「吉夢」なんだそうな。だからって調子こいて夢の中にフレディやトールマンに出てこられたら、それはそれでひじょうに困る。

ここにも悪夢にさいなまれるお話が出てきて、その逃げようのなさにうなじが粟立つ。
また表題作の『ついてくるもの』や『八幡藪知らず』のように自分の軽率な行いが原因となって身内や友人に不幸(この場合死が多い)が訪れるというのは、怪異そのものの恐怖もさることながら浅はかな己を呪う気持ちの方が強くてやり切れない気持ちでいっぱいになってしまう。

『ルームシェアの怪』もぞわぞわする。おそらく“うっかり”の範疇だとは思われるが、そこに気配や物音(家鳴り)なんかも加わって気色わるいって云う話かなあとひとまず信じよう。とはいえ、まわりが同じ事柄を同時に失念してしまう。っていうのは日常生活においてもままあってやけに不思議に思うことはある。

この短編集で個人的に最恐だったのは『裏の家の子供』
この一見決着がついたかのように見える終わり方の話がやっぱり厭だわ。しかし、あの女の子はいったいなんやったんやろ。顔だけにゅうっと覗くとか、この奇妙な感じは厭魅を思い出して気持ち悪さが後を引く。

最終話で刀城言耶シリーズ登場やー!と色めき立つが、なんとなく恒例となってきつつある言耶とクロさんと偲の無駄にだらだらと続くコントは、いつも思うけどあんまりおもしろくない。正直いらないと思う。
これが始まるとそこだけすっ飛ばしたい衝動にカラレル。でも会話にどんな伏線が隠れているやと思うとそれもできなくて、ある意味ゴーモン。

Posted by K@zumi

誰かの家

誰かの家 (講談社ノベルス)
三津田 信三
講談社
売り上げランキング: 354,728

家出少年が、計画した空き巣狙い。悪乗りした友人が侵入先として見つけてきたのは、近所でも有名な幽霊屋敷だった。躊躇する少年に友人は、屋敷を隈なく探検してくれば金を出すという。設備は整っているのに生活感皆無で迷路のような屋内には、白いシーツをかけられた何かが、大量に置かれていた(表題作「誰かの家」)。日常生活の裂け目にある怪異が、チロリと顔を覗かせる。思わずぞおっと背筋が寒くなる怪奇短篇6篇を収録。


またもや安定の怖さ。これを一日で読み切るには相当の覚悟が入りそう((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

特に怖かったのは『あとあとさん』
虚構が現実に侵食してくる恐怖はもちろんのこと、わたしはお母さんの気持ちの方に同化していたので、このたまらなく心細く気も狂わんばかりの気持ち悪さは筆舌につくしがたい。
『湯治場の客』もイヤだ。お話としてはスリラーのスタンダードのような感じなのだが、登場する女性が“いかにも”な雰囲気ではなくボーイッシュで幼さの残る少女のような体躯なのが、怪奇とのギャップがあってリアルに怖い。しかし全裸で追いかけられるのはマジかんべん。

で、この華奢な「紘子さん」で、まったく設定もストーリーも違う怪奇漫画(ミステリかな?)に『朱雀の紋章』(和田慎二:著)というのがあって、そこに登場する「千晶」という少女をふと思い出した。
あの漫画も怖かったなあ。もう一回読みたいけど、どうしらいいんだろう。

それと蛇足だけど、作中で三津田センセイより「ぐだぐだの展開で鑑賞の気力が見事なまでに萎える」とのお墨付き(?)のホラー映画、『ROT/ロット 惨劇の同窓会』もちょっと観てみたい気がする。ボクが人柱になるので、読者の皆さんは絶対に観てはいけない、とまでくぎを刺された『パジャマ・パーティー・マサカー 血の春休み』も。こんな風に断定されるとガゼン興味がわいてしまうではないかッ!!

てか、そこまで三津田さんが言及するのって、もしかしたら観た者に不幸がおとずれる噂とか……?
っていう穿った考え方をついしてしまったり。

Posted by K@zumi

倒錯のロンド

倒錯のロンド (講談社文庫)
折原 一
講談社
売り上げランキング: 40,257

精魂こめて執筆し、受賞まちがいなしと自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた。―その“原作者”と“盗作者”の、緊迫の駆け引き。巧妙極まりない仕掛けとリフレインする謎が解き明かされたときの衝撃の真相。鬼才島田荘司氏が「驚嘆すべき傑作」と賞替する、本格推理の新鋭による力作長編推理。


どうにかこうにか返却期限までに予定冊数をクリア。ふー。
やっぱりね。3週間で8冊は正直キツかったなー。がっつり長編も多かったし。その分心地よい達成感はアリ。

折原さんの小説はアンソロジーで何編か読んだだけで長編としては初読。
折原一といえば“叙述トリック作家”というのか冠されるくらいにその界隈では有名で、なかでも本作は「衝撃的な傑作」との評判がすこぶる高いので心して読ませていただきました。
ハイ。スッキリ・キッチリやられました。

まーねー。叙述トリックの名手から一本取ろうなんておこがましい思いはハナからなかったわけですが、(とか云いつつなにげにポイントはそっと押さえながら読んでいたんだけど)自分がうまく騙されてるんだろうなあという自覚はあっても、なかなかアレに気付くことができなくて、クライマックスにきてようやく「おろ?」と不審には思うものの、それでもまだピンと来ないわたしってほんとバカ?
最後の種明かしを読んでページを行きつ戻りつ確認してようやく作者のひっかけに膝を打つという…。

でもさ、結局ソレを出しちゃうと、ぶっちゃけ何でもありってことになるんじゃね?
なんて負け惜しみを云いつつ、あれだけハラハラドキドキさせられ二転三転とセーダイにひっくり返していただき、夕方のキッチンにまで持ち込むほど楽しい時間を過ごさせていただいたことに、感謝を。
読み終わってみれば『倒錯のロンド』というタイトルが云い得て妙で秀逸やなと感じます。

まるでギャグのようなあり得ない巻き込まれ方で不幸な境遇に落とし込まれていく最悪男の「山本安雄」
スリリングな心理サスペンスから陰湿な復讐劇、そこからサイコホラーチックな展開へ。
描かれてる内容はかなりダークで悲惨なんだけど、文体はコミカルでちょっとばかりドタバタ調。
テンポが良くとっても読みやすいので、半日くらいでスラスラいけちゃいますよ。

Posted by K@zumi

蝶々殺人事件

蝶々殺人事件<「由利先生」シリーズ> (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2012-10-01)
売り上げランキング: 35,108

原さくら歌劇団の主宰者である原さくらが「蝶々夫人」の大阪公演を前に突然、姿を消した……。数日後、数多くの艶聞をまきちらし文字どおりプリマドンナとして君臨していたさくらの死体はバラと砂と共にコントラバスの中から発見された! 次々とおこる殺人事件にはどんな秘密が隠されているのだろうか。


横溝フリークのなかでは、この作品が初期の傑作であると誉れ高いのはじゅうじゅう承知しております。
にもかかわらず、信じられないことに、わたしはこの作品が初読なのであります。
まさに横溝ファンにあるまじき所業。(つうか堂々と名乗ってること自体がちょっと恥ずかしいです)
いろんなミステリファンの方から散々おすすめいただいていたにもかかわらず、ほとんど意地のようになって今の今まで手に取らず放置していたのはそれはひとえに、

『 金田一さんじゃないから 』

とゆうまったくもってくだらない理由に他なりません。あほや。ほんまあほやった。

うーん、ひさびさに読みましたがやっぱ横溝作品はおもしろいわ。おじさま、天才。
わたしは本作に対してはある程度の予備知識があったし、またそれなりに横溝作品は読んでいるので、氏の作風というか小技のかけ方など「やっぱこう来るか!」的な読める部分もたしかにあるのだけど、それを差し引いても大小さまざまなトリックがひしめくなんとも豪勢な内容となっていて、そう、彦摩呂風に云うと

『 トリックの総合商社や~! 』って感じかしらん。

コントラバス・ケースに詰められた死体、東京と大阪を結ぶアリバイトリック、楽譜を使った暗号、(ちょっとネタバレになっちゃうけど)一人二役、おまけに「読者への挑戦状」まで登場。かー、ゼイタクやわー。
すでにページをめくった瞬間から、仕掛けられた魔法はしずかに、そして確実に発動し、読者は横溝センセイの掌のうえでいい様に転がされ操られ弄ばれる快感をたっぷりと味わうことになるのです。
でもって本丸は『本陣殺人事件』などでも知られるように、先生お得意のとんでもトリック。
かなり、つか、そーとーアクロバティックでフツウに考えたら噴飯もののトリックであっても、これが巨匠の手にかかるとあらフシギ。びっくりするほどストーリーに無理なくするりととけ込んでしまってるところなんてホントさすがだわ。もうしびれるほどアメージング。いろいろと。

息をもつかせぬスピーディーな展開、次々と反転していく真相、明るみに出る衝撃の事実の数々。
散りばめられたピースがひとつに繋がるとき、意外な真犯人がそのベールを脱ぎます。
ある意味横溝正史の代名詞ともいえるどろどろとした因習や因縁にまみれた怪奇ロマン調な趣向は封印し、あくまでトリッキーな純本格探偵小説に徹した、どちらかといえばマニアックな玄人向けの快作なり。

Posted by K@zumi