僧正の積木唄

僧正の積木唄 (文春文庫)
山田 正紀
文藝春秋
売り上げランキング: 743,388

「僧正殺人事件」が名探偵ファイロ・ヴァンスによって解決されて数年。事件のあった邸宅を久々に訪れた天才数学者が爆殺され、現場には忌まわしき「僧正」の署名が…。
全米中に反日感情が渦巻く中、当局は給仕人の日系人を逮捕。無実の彼を救うため立ちあがったのは、米国滞在中の金田一耕助だった。


本家の作品のなかでの登場人物の設定がびみょうに脚色されていて、しかも山田さんのほうがいっそう生ぬくい人間味があって、あの「ヴァンス」でさえ、実にほほえましい愛すべきキャラになっちゃってんですョ。
ぱっと見た感じちょっと恐れをなすくらいの長編ぽいんですが、これが意外にすらすらいけちゃう。

著者も横溝さんじゃないし舞台もニューヨークなので、あの独特のからみつくような陰鬱な粘着感ややり切れない閉塞感はさすがに感じないけれど。でも金田一耕助とゆう甘い記憶をゆるくかき乱すその名前を、また再びこの目で見ることができただけで、訳もなく胸はきゅ~んと切なくなってしまう。
人恋しい秋の夜長にはとってもうれしい一冊になりそうですよ。
しかし金田一さん、あんなに早く真相が分かっていただなんてマジかよ?って感じですやんー。


あとがきにあった文章から

若いころのある時期、精神的に非常に苦しかったときに、私を支えてくれたのは横溝正史先生の「金田一耕助シリーズ」でした。けっして誇張でも何でもなしに、あのとき「金田一耕助シリーズ」に出会うことがなかったら、あのころの弱いうえにも弱かった私がどうなっていたかわかりません

まったく同感で、思わずじんときましたです。

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Posted by K@zumi

びっくり館の殺人

びっくり館の殺人 (ミステリーランド)
綾辻 行人
講談社
売り上げランキング: 619,004

とある古書店で、たまたま手に取った一冊の推理小説。読みすすめるうち、謎の建築家・中村青司の名前が目に飛び込む。その瞬間、三知也の心に呼び起こされる遠い日の思い出…。三知也が小学校六年生のとき、近所に「びっくり館」と呼ばれる屋敷があった。いろいろなあやしいうわさがささやかれるその屋敷には、白髪の老主人と内気な少年トシオ、それからちょっと風変わりな人形リリカがいた。クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、「リリカの部屋」で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に!あれから十年以上がすぎた今もなお、事件の犯人はつかまっていないというのだが…。


愛する綾辻さんの、しかもあまり評判が芳しくないとうわさの『びっくり館の殺人』
少年少女むけとして書かれた本作は字もおおきくてふりがなもちゃんとふってあってやたらにむつかしい言葉使いもなくて厚さのわりにはとても読みやすく、読むのがすごおおく遅いわたしでもたいだい三時間くらいで読了できちゃう。

でもこれ、ぜんぜん悪くないですよ。
ちびっこたちには適度にオカルティックで、すこし甘めの叙述トリックが使われていて、汚れた大人たち(?)には「いい加減、この線は勘弁してよ!」てな展開でも彼らには新鮮な「オドロキ」が得られるんじゃないかしら。
なによりこの作品にふれることから、子どもの頃わたしたちが図書館にずらりと並んだ怪しげな表紙の乱歩作品を夢中になって読みまくって、奇妙でくらくらするくらいに妖しくてまたロジカルな世界観にふかく魅せられたように、彼らもミステリを読むことの愉しみみたいなものをそのちいさな胸に刻んでくれたらいいなあ。それって、作家としてめっちゃうれしいことだよね?アヤツジさん?って思っちゃいました。

綾辻行人の作品は感情のこもってない、まるでパズルのような文章なので苦手だ。とおっしゃる方がいます。
それもとてもよく分かります。たしかにねーって思います。
けれどわたしには、実際のこの人はきっととても繊細でかわいくて優しいひとなんだろうなあ。
とゆう気がするんですよね。
でもそんなひとが臓物どろどろのスプラッタ小説『殺人鬼』なんて書くかよー!
といった至極もっともな意見もあったりするわけなんだけども。
まあそんなこんなもぜんぶ含めて、彼の作品はこれからもずうっとすきでいつづけるんだろうなあって。
やっぱり今は思えちゃうのです。

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Posted by K@zumi