冷たい校舎の時は止まる

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)
辻村 深月
講談社
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冷たい校舎の時は止まる (中) (講談社ノベルズ)
辻村 深月
講談社
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冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)
辻村 深月
講談社
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ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。 死んだのは誰!?
誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作。


第31回メフィスト賞受賞作品。上中下巻からなる切ない長編学園ミステリ。
作者は、辻村深月(つじむら みづき)さんとおっしゃるお若いお嬢さん。
ちなみに、辻村の"辻"はしんにょうの点ふたつ。これだけですでに「おお?」とゆう感じが。
しかも。"深月"とはあの『霧越邸殺人事件』に登場するヒロインの名前ではないの?
とここまでくれば、もう間違いありません。
彼女は綾辻行人フリークだッ!と思ったら、やっぱりそうでした。ほほ。

誰もが通りすぎる青春の日々。 不器用で、泣きたいほど頑なで、純粋であるがゆえの残酷さ。
その切ないこころの襞が痛々しいほどに伝わってくる。

まるで現実味のないトレンディードラマのような出来すぎたキャラクターたち。
その夢のようなキャスティングのなかで、端麗な風貌とは裏腹に見えてくるそれぞれの深い心の闇の部分や、目を背けたくなるようなやり切れない現実との対峙。
トモダチとゆう怪物をもてあまし、傷つき傷つけ続けることで存在を証明しようとする。
何もできない、いや、してやれなったことへの例えようもないほどの後悔と罪悪感。
この辺のエピソードがかなりリアルで秀逸。胸に刺さったままの棘がチクンと痛みます。

最初借りるときは「ミステリかな」と思いつつ読みはじめたんだけど、途中から「おいおい、ホラーかよ?(しかもめっちゃ怖いし!)」とゆう感じになって、後半はどんどん恩田さんみたく怒濤のファンタジーぽくなっていって、最終的にはほろ苦くて切ないキュアな青春小説になっていたのでした。

できれば忘れていたい。
そして必死に忘れようとしてきた、あの頃のするどい胸の痛みがよみがえってきます。
想い出はいつも甘く美しいだけじゃ決してないのだ。

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Posted by K@zumi

妃は船を沈める

妃は船を沈める
妃は船を沈める
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有栖川 有栖
光文社
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所有者の願い事を3つだけ、かなえてくれる「猿の手」。“妃”と綽名される女と、彼女のまわりに集う男たち。危うく震える不穏な揺り篭に抱かれて、彼らの 船はどこへ向かうのだろう。―何を願って眠るのだろう。臨床犯罪学者・火村英生が挑む、倫理と論理が奇妙にねじれた難事件。


まずは装丁がとってもキュートで乙女チック。
あとがきならぬ、はしがきによるとですね、もとは『猿の左手』とゆう中編があって、その二年後に偶然の発想から後日談として執筆された『残酷な揺り籠』とをあわせることによって、魔法のようにひとつの長編ができあがった。のだそうです。
まるでそうなることが最初っから運命づけられていたかのように。

   この小説の底には、もの悲しい歌が流れているように思えたので、
   そのイメージに近いものを探しているうちに、アマリア・ロドリゲスの名曲が思い浮かんだ。

冬の空気のように透明でツンとかなしくて、胸の奥がぎゅうっと痛くなるほど切なくて、繊細でつややかにキラめく細い絹の糸のように静謐な雰囲気をもつアリスさんの世界。
さらさらと指のすき間からすべり落ちる砂粒みたいな寂しさ。甘いリリシズム。
愛してやまない、儚く美しい硝子の船が、きっとそこにふわりと浮かんでいるようです。

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Posted by K@zumi

少年は探偵を夢見る

少年は探偵を夢見る―森江春策クロニクル (創元クライム・クラブ)
芦辺 拓
東京創元社
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少年の日、妖しいキネオラマにて怪人と名探偵に出会った森江春策。中学生となった彼は、「存在しない13号室」のあるアパートで起きた殺人事件を解決し、大学時代には、二都で起きた怪死を繋ぐ意外な真相を看破する。その後新聞記者となり、廃墟ホテルで発見された生首にまつわる冒険を経て、弁護士に転身した森江春策が対決するのは、タイムマシンでアリバイを築いたと主張する殺人者!名探偵・森江春策の軌跡を描く傑作ミステリ五編。


"森江春策クロニクル" とサブタイトルが付けられた本作は、大阪在住のほんわか名探偵:森江春策の軌跡を描いた短編5作品をびしっと収録。
そしてその内容はといいますと、夢幻的で、昭和的で、摩訶不思議な雰囲気といい、奇想天外でとんでもなトリックといい、かな~り乱歩的なわけで。

でもって殺害方法もとっても陰惨で猟奇的(首がちょん切られたり、全身の骨があやつり人形みたくぐにゃぐにゃに折れていたり…)なんだけど、でもちっともどろどろしてなくて、深刻になりすぎてなくて、ヒッチコック監督が云っていた「殺人は喜劇だ!」とゆうものすごおおく不謹慎な精神にのっとってる感じ(?)で、わくわくと胸おどる冒険活劇チックなんであります。

好きなんですよねぃ。こうゆうの。いくつになっても。
お約束の設定、胡散臭い登場人物、愉快で頼もしい仲間たち、レトロで怪奇な事件簿。
リアルなだけがすべてじゃないのさ。
だって折角のうそっぱちのすてきな世界。どこまでもシュールに。あくまでもユーモラスに。

ついつい夢見る少年の気持ちになって読んじゃいますよ。

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Posted by K@zumi

ママの狙撃銃

ママの狙撃銃 (双葉文庫)
荻原 浩
双葉社
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福田陽子は一見ふつうの主婦。ある時、「もう一度、仕事をしてみないか」25年ぶりのKからの電話。幼い頃米国に住む祖父の元で暮らした陽子は、祖父からあらゆることを教わった。射撃や格闘技、銃の組み立て・分解。そう、祖父の職業は「暗殺者」だったのだ。


『ママの狙撃銃』、大変たのしく読ませていただきましたー。
ヒロイン自体はいたって真面目でタフでハードボイルドなのに、アチコチからほわわわんと漂ってくる庶民的なコメディ感覚との見事なまでのコラボ。すてきすぎるう。

日常的な部分と非日常な闇の世界との対比がほんとうに心地よくマッチしていて、つらくて哀しい物語りなのに笑える、独特の荻原ワールドがみつしり堪能できます。

おもしろかったデス。曜子さん、サイコーです。

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Posted by K@zumi