『臨床犯罪学者 火村英生の推理』第4話

ドラマ第4話は、火村シリーズでも不動の人気を誇る『ダリの繭』
さて、先週からいろいろ気になっていたことについて検証してみましょう。

・例の「新婚ごっこ」コントは再現されるのでしょうか?
 ⇒再現されてましたねえ。火村氏、おそろしく仏頂面で新妻発言。しかもかなり見つめあってました。
  ジュエリーショップでの平行移動といい悪ノリしすぎやろ火村(だれか工をとめろ)  
  アリスの「知っとるか。俺な…」の後が気になります。(ソコでCMかよ?)

・学生アリス(うーん、違うな)の悲しい恋のお話はどんな風なんでしょう?
 ⇒お相手の女の子がけっこう屈託のない感じですこし想像とは違ってたかなー。
  といっても想像では淡いうしろ姿だけしか浮かばなかったんですけれど。
  で、その初恋の彼女が鷺尾さんにそっくりというベタな展開。
  おかげで鷺尾さんの性格や設定にかなりのアレンジがほどこされていました。

・で、ふたりはちゃんと近鉄特急で鳥羽にきたのかしらん?
 ⇒みごとにショートカットされてました。残念!あのお店はどう見てもセットやし。
  まあ鳥羽が話題に出たことで手を打とう。いつか近鉄で鳥羽水族館の海豹を見に来てね。
  (そしてそこからスウェーデン館へとつなぐ。すばらすぃ♪)

・果たして火村センセは時絵さんにちゃんと真珠のブローチを買ったのでしょうか!?
 ⇒あかんかったですね~(´∀`) お土産はナシでした。
  でも代わりにセンセにハグしてもらってたんで、結果オーライでしょうか。
  しかしながら彼女の発言でトリックに気付くというのはちょっとどうだろうか?
  てか、天下の岩城滉一の使い方がもったいなくないか?(そもそも秀一って40代のハズ)

・なによりあの長編をたった一時間たらずでまとめられるのでしょうかっ??
 ⇒これなあ、、、


ということで、率直な感想としては、この物語を一話で収めるにはやっぱり尺が足らんかったんではないか。と思う。せめて前・後編として二週にわけてやってほしかった。あと二時間スペシャルでとか。
なにより今回残念な想いがしてしまうのは、“新婚ごっこ”にばかり期待が集中してしまって(いえ、それも大事なんですけど)キモである「繭」の存在が軽く扱われすぎなような気がしたのだ。
原作を読まずにこのドラマだけ見た人は、どんな感想を持ったのだろう。ものすごく聞いてみたい!

もっとも、ドラマ制作陣としてもほんとうはもっと丁寧につくり込みたかったろうけど、そこはスポンサーとかスケジュールとか予算の問題とかもあってムリくり一時間足らずでまとめてしまわなけれなならなかったという内輪の事情も多々あるだろうから、そういう意味ではこの時間内でこれだけキレイに破綻なくまとめ上げられたのはある意味すごいことなのだろうと思う。

それに、たしかに削られた登場人物や端折られたエピソードはあったとしても、主役のふたりの“新婚ごっこ”に対する反響の大きさ、破壊力のスゴさに、これがイイ意味で“客寄せパンダ”的な役割をはたすことによって「よっしゃ、ほな原作もいっちょ読んだろかいな!」という人が増えてくれることが大いに期待できるんではないかと思うわけで。転んでもただでは起きないのだ。(別に転んでないケド)
そうして、偉大なるダリに憧れ狂おしいほどの恋におぼれやがて破滅への道を歩んでいった哀れな男の物語のなかに、そこに描かれるフクザツで滑稽で孤独な人びとの人間模様や、誰にでもあるそれぞれの「繭」に対する切実で目の前をじんわり熱くさせる感傷的な想いを、読者一人ひとりがその腕(かいな)にそおっと抱くように愛おしく理解してくださるとうれしいなあ、と思う。
あと、なんともドラマティックで胸を打つ美しいラストシーンもぜひ味わってほしい。


『ダリ繭』での火村氏の印象的な例のセリフについて、ドラマでの解釈とは別に少しお話させてください。

「火村先生の繭はなんや?」
 彼は大きな欠伸をした。そして――
「学問にかこつけて人間を狩ることさ」
 あまりにも自嘲的な口調だった。答えたくなかったのだ、聞かなければよかった、と私は思った。


アリスの「聞かなければよかった」という言葉に、彼のことをまだ理解していない自分が、はからずも火村氏のやらかい部分に触れてまったアリスの心の痛みが伝わってきてやるせない気持ちでいっぱいになった。
それでもお互い目をそらすことなく真っ直ぐ向き合うところがこのふたりのあったかいところだ。

繭が傷つきやすい自我を防衛する一種の避難場所、シェルターなのだとしたら、彼が犯罪者を狩ることは、自らのゆいいつの逃げ場所、かつて身を焦がした殺人への衝動に対する抑止の役目も果たしているのだろうか。
もしもほんとうに「人間を狩る」ことが彼の繭なのだとしたら、こんな残酷で悲しい救済はない。

『ダリの繭』がファンのなかでいちばん人気と云われるのは、火アリの新婚ごっこなどのかわいいやり取りだけじゃなく、遠い青春の日にこなごなに壊れた心を、気が遠くなるほどの痛みと送り返そうにも番地のない苦しみにもがき倒れそうになりながら、推理小説という彼の繭を形成するまでの過程が、青春小説としてかなり秀逸だからだ。そして読者はアリスのこの壮絶な悲劇を美しく追体験することで、わたしたちは彼と同じように救われまた同時に微かな希望を見つけることができるからなのだろう。

人はみんな等しく寂しくて悲しい。

誰も愛さずにすめば、そこそこ穏やかで仕合せな人生が送れるのかもしれないけれど、でも人はそれでも誰かを求め愛し傷つきそして哀しむことをやめないのだろう。
だから繭を形成する。蜜のように甘くゆるやかな孤独に抱かれて、もうひとりの自分を再生するために。

アリスの「私の小説。私の繭よ」には心を打たれる。

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Posted by K@zumi

コメント

こんばんは

読んでてちょっと泣きそうになりました。
原作のアリスという人は客観的な描写がほとんどなくて、それでも時折出てくる様子(『火村英生に~』や『笑う月』など)に周囲からはきっと屈託がない人と見られているんだろうなと思うんですけれど、そして確かに火村先生より友人も多くて、社交的な人なんだろうと思うのですけれど。けれど時折彼の過去や心情が描かれるたび、その内面の繊細さや優しさに憧れるし共感するんです。”聞かなければよかった”と火村先生に気を使いながら、自ら延々と繭を紡ぎ続け、そのことを火村先生にも話さない彼が、火村先生にも深く事情を聴こうとすること無く(本当はそれを望んでいても)ただ黙って寄り添い続けるというのはすごいことだと思います。アリスは火村先生に話させてしまったことを後悔しているけれど、ごまかすことなく語った火村先生は、ちゃんと自分の意思で、自分が許すからアリスに言ったんだと思いたい。一ファンの勝手な願望ですが……。意味不明ですみません。

≫人はみんな等しく寂しくて悲しい。
全くその通りだと思います。それでも自分の意思で誰かを好きになったり自分の繭に籠ってみたり、それはどちらも幸せなんだとも思います。
原作でもドラマでも火村先生はアリス以外友人がいない、と言われるけれど、アリスに先に声をかけたのは火村先生なんですよね。そして友達が少ないわけではないアリスにとって、一番親しい友が火村先生。二人は互いに互いを繭に入れることは絶対にないだろうけれど、万が一繭が破れてしまったとき、こういう友人がすぐそばにいてくれたら、それだけでまた眉を紡ごうと思えるのではないかなあと。……今度は抽象的ですみません。

以前書き忘れていたのですが、こち亀小説版読んでます。……京極先生の部分だけ(笑)関口君を友人と話す京極堂にちょっと泣きそうになりました。京極堂があれほど穏やかなんだもの、関君はきっと無事に、それなりに幸せに人生を送れたんだろうなと思っています……繭紡ぐのにも失敗しそうな人ではあるけれど。

あー、翻訳の悩みわかります。というか正にそれで小学生の時ポアロに挫折しました(笑)ホームズも、先に漫画版(すごい良作だった)を読んでなかったらダメだったかもしれません。翻訳って大事だと思います。そして、すべてがAになる。素敵な言葉ですね……!

買い損ねてた有栖川作品と手元になかった『終わりなき~』と『悪魔が来たりて~』を買ってきました。現在片っ端から読みつつ紹介ページ作ってます。アドレスはハードボイルドの解説しかしてないので、もうちょっとまともにできてから送ります。イマノママジャミセラレナイヨ(;´・ω・)もし近くだったら入り浸ってくださいぜひ(笑)横溝先生については前回K@zumi様の返信で気が付いてたのですが、

私、昔、菊池秀行読んでた……。

あれ読んで横溝作品で怖がってた自分がよくわかりません(-_-;)

最後にお礼を。
母に、ここに書き込んでいることを話したら、何だかその流れでそのうちお店の企画として読書会をしようかという話になってまいりました。完全に俺得企画なんですが、実現には時間もかかりそうなんですが、まずお礼を。ありがとうございました!因みに母は現在46番目の密室(当然朗読)に夢中で今後ろから続きをせっつかれております。ドラマも見てまして前回事件解決と見るや家事始めたので「君は一番肝心なところを見逃している」と指摘したら「自分でもそんな気してる!そんな気してる!!」と返すような人です。

  • 2016/02/10 (Wed) 03:45
  • 和泉若里 #-
  • URL
Re: こんばんは

> 読んでてちょっと泣きそうになりました。

 ほんまですか!?
 なんかうれしいなあ。心にちゃんと届いたのですね。

> そして確かに火村先生より友人も多くて、社交的な人なんだろうと思うのですけれど。けれど時折彼の過去や心情が描かれるたび、その内面の繊細さや優しさに憧れるし共感するんです。

 もーアリスがダイスキなんですよ!ワタシ(*´ω`)
 彼が『学生アリスシリーズ』を執筆しているところもポイント高いンだけどっ。
 (わたしは作家アリスの次に江神さんがスキ♪)
 ことさら陽気でもなければじれったいほど内向的なわけでもないし
 穏やかなのは気の弱さと裏返しと思えるようなところもあって、とにかく親しみやすい。
 彼は火村氏をものすごく大事に思っていることはひしひしと伝わってくるけど
 同じように火村氏だってアリスのことをとっても気遣っていると思うけれど
 彼がそれにあんまり気づいていない鈍感なところも、なにげに自分勝手でよろしい。

 あのぜつみょ~なツッコミも、びみょ~にセコイ感覚もたまらんくらいツボ。
 真剣な推理(あるいは捜査)の最中に、けっこうイランこと考えてるところも
 「キミ、もしかして狙ってる?」とツッコミたくなるほど、わたしは彼にゾッコンです。
 アリスは、『センチメンタルな詩人』(たぶん温厚なO型)
 火村氏は、『ロマンチックな反逆児』(たぶん天才肌のAB型)
 うわー。めちゃ相性ワルいやん!(≧∇≦)

> アリスは火村先生に話させてしまったことを後悔しているけれど、ごまかすことなく語った火村先生は、ちゃんと自分の意思で、自分が許すからアリスに言ったんだと思いたい。

 あの辺の火村センセの言葉には、ほんまに深いものを感じますよね。
 某国立大の先生の云う「この世のあらゆる犯罪が冤罪であるかもしれないのに」
 というのもたしかに極論過ぎてちょっとどうかなとは思いますけど
 「罪も罰も文化という馬に乗ってどこへでも走る」というのは、ほんとうにそうかも思う。
 だってほんの二百年足らず前まで、この国でもあたり前に仇討も許されていたのだから。

 火村氏のなかのトラウマはたしかに彼を今も縛っているのかもしれないけれど
 彼にはそれにも増して強くしなやかな知性があるから、
 猛獣のような狂気もうまく飼いならしているように感じますね。
 アリスの存在ももちろん大きいと思う。
 (まあ出会ったときにはすでに火村くんはある程度トラウマについては克服していただろうけど)
 お互いがやじろべえのように風に揺られてふらつきながらも、たしかな均衡を保っている。
 ただ何かの拍子で導火線に火がついたときに、どういう行動に出るかわからない
 そんな危うさが漂うところが、このシリーズのひとつの魅力でもあるのかもしれません。

> 原作でもドラマでも火村先生はアリス以外友人がいない、と言われるけれど、アリスに先に声をかけたのは火村先生なんですよね。

 ああそうだ!そうだったですよね!まさに運命の出会い!
 「アブソルートリー」だっけ?あの頃からキザや、火村英生(≧∇≦)

> 買い損ねてた有栖川作品と手元になかった『終わりなき~』と『悪魔が来たりて~』を買ってきました。現在片っ端から読みつつ紹介ページ作ってます。アドレスはハードボイルドの解説しかしてないので、もうちょっとまともにできてから送ります。

 楽しみにしてます。
 わたしのは「なんちゃって感想@大幅に脱線、ときどき妄想」って感じなので
 するどい考察を期待しています!(とさらりとプレッシャーをかける)

> 私、昔、菊池秀行読んでた……。

 わたしの十年来の友人で師匠と仰ぐSouさん(でもまだお会いしたことはナイ)
 もよく菊池作品を読んではるんですよねえ。
 今のところ未知な作家さんですが、読んだらきっとわたしもハマるんやろうな~

> 母に、ここに書き込んでいることを話したら、何だかその流れでそのうちお店の企画として読書会をしようかという話になってまいりました。

 わあ!なんかお役に(知らんところで)立てたみたいで良かったです(^∇^)
 つか、わたしは特になんにもしてないんですが。
 
 読書って読み方や感じ方が人によってさまざまだから、解釈なんかも無数にあって
 目からウロコがぽたぽた落ちるようなお話がいっぱい聞けるのでしょうねえ。
 ええなあ。うらやましい。
 やっぱりテーマを決めてって感じでしょうか、今回は『悪魔の手毬唄』で。とか。
 映像作品との違いを論じ合うのも楽しそうですね。

 そ・れ・に
 お母さまもとってもかわいらしい方なんですね♪
 わたしもいつか娘に朗読してもらいたいわあ~(望みうすいケド…)

  • 2016/02/10 (Wed) 12:28
  • K@zumi #pULoeKa6
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