『臨床犯罪学者 火村英生の推理』第6話

さてさて、今夜は『朱色の研究』初回からこれ見よがしに打たれていた布石がようやく日の目を見ます。
まずはストーリーが前、後編にキチンと分割されていたことにひとまずの安心を。

こちらは世界の終わりのような激しいオレンジ色の悪夢を見つづけている悩める女子大生、朱美ちゃんのトラウマを、自身も悪夢にさいなまれている火村氏がフクザツに絡み合う三つの事件を解決することにより彼女を極度のオレンジ恐怖症から解放しようとする、というお話。
今回は内容的に彼のトラウマの疑似救済にも似た展開となるためか、やはり時間をかけて丁寧に描こうとする意図があるのかもしれませんね。
犯罪自体は(動機も含め)かなりの変化球なので、その辺をどんな風に切り崩し、いかに視聴者に納得させるかが、ドラマ制作陣の腕の見せ所というところでしょう。


この『朱色』ではアリスですら憚れて聞きそびれている火村英生の悪夢の内容が、永久凍土のように心の奥に封印している朱美の苦悩を溶かすために、初めて彼の口から語られるというとても貴重なエピソード。
この回の演出ですこし不満を云わせてもらえるなら、このヒムラーには垂涎ものの画期的な場面が

いやにあっさり描かれてやいませんやろか? ということ。

火村氏の悪夢は彼自身にとって茶飲み話のついでにさらっと話せるような内容なんかじゃとてもなくて、原作でもそこでの彼は柄にもなく動揺し、うっすらとその顔色すら変えている。
実際、話終わった火村氏がまるで汚らわしいものがついてしまったかのように、自分の両手をシャツの裾で拭うのを、はからずもふたりは目撃してしまう。(個人的にもココはとても印象的な記述!)
そして彼は云いよどむ朱美嬢に対しても、彼女のなかに六年間も澱のようにとごっている(コレ、標準語でなんて云うの?沈殿するか?)ものを吐きだしてしまえと迫る。
「質問をしているのに、質問し返さないでくれ」「俺に答えを誘導させないでくれ」とかなり必死だ。

ドラマ版ではその告白部分がけっこう淡々としていて――それは毎回くり返し描かれている絵と変わらないためか――さほどの衝撃的シーンには映らなくて、むしろちょっとびっくりだったのが、アリスがくり返し見る悪夢の内容が「火村氏が崖の淵からひらりと身を踊らせ、彼の名を叫びながら必死に伸ばす自らの手が届かない」というシチュエーションであるということの方だ。
うーん、そんなに何度も夢に見るほどのアリスの心配さ加減がめちゃめちゃ重い。そんなに?まあその方が火アリファンの気持ちがさらに盛り上がるのはたしかだけど。ああ、健気なアリス。
それにしてもシャングリラさん一行は何をたくらんでいるのだろう。どうやらターゲットが火村センセにシフトしたみたいだし、何ゆえかさっぱり判らないけど。(ただ自分たちの同志にしたいだけ、なんて安直な理由じゃないよね?)てか、諸星女史は催眠術師か!?

もとい。原作でもたしかにアリスは火村センセのことをとても気にかけているし、彼が話す気になればいつでも聞いてやろう、何かあればその腕を引っ張りあげてやろう頼りないかもしれんがまあ勘弁しろ!的に決意はしているけれど、でも一方で彼がいっこうに口を割らない(いえ、開かない)ことに対してアリスはそれほど寂しがったり不満を持っているというわけでもなくて、特に遺漏がなければ現状維持でオッケーやでみたいなところがちょっと見える。
その辺のユルさ具合が彼らの不動の魅力でもあり、しいてはシリーズを長続きさせている所以でもあったりすると思う。まさに愛すべき名コンビなのだ。

てことで、いよいよ今回のハイライトシーンへ。やー、けっこういろいろありましたよね(´∀`)
特に窪田アリスファンには七変化する彼の表情や仕草のかわいらしさにメロメロなんでしょうね~
わかるよ、オバチャンにだって。
ま、わたしがチョイスするのは例のエレベーターのトリックを解明するシーンでのコント(違う。推理)
ここでは火村センセも一発かましてくれてましたね~
せっかくの決め台詞をかっこよく云いかけたところで、まったくノーマークだったはりきりボーイの坂下くんにばっさり持っていかれちゃった。という悲劇からでた苦渋のひとこと。

 坂下くん、いま、、、


控えめに自己をアピールし、ぼそぼそっと抗議したそうな素振りのセンセがでらかわいかったぞ。

それにしても坂下くんすごいよね。あれだけ瞬時に解けるなんて、なんてキレるやつだったんだ!
(それでも合コンでの“やっちまったな”の件はチャラにしてもらえなかったみたいやけど)
そのあと、トリックが解けないアリスたちに向かって「じゃあ、云いましょうか?」となんのケレン味もなくのたまう坂下刑事に対してアリスが発したこのコトバ。

 まだ、い゛わ゛ん゛と゛い゛て゛ぇ゛~ッ!!


まーねー探偵助手の沽券にかかわることですからねえ。しかも迷言だ、コレ(≧∇≦)
痩せても枯れても推理作家たる者、そこは意地を見せてもらいたかったところであります。むふ

またマンションでの現場検証に朱美ちゃんも同席させ、バルコニーからの景色の違いやその他不自然な点を指摘させる役目を彼女に与えている構成は、火村助教授が教え子である彼女に謎解きへ参加させることで彼女自身を縛っているトラウマに立ち向かうべくウォーミングアップをさせているようで、そのやりとりに少しほっこりしました。なかなか生徒思いのええ先生やないの、火村ちゃん。(マキタスポーツっぽく)

ここで少し余談になるのですが、以前に某バラエティー番組に視聴者参加型の推理ショー(パネラーたちといっしょにゲームするみたいなやつ)で、同じようなエレベーターのトリック(なぜ容疑者は確かに〇階の番号を押したのに、別の階に誘導させられてしまったのか)というのがあって、わたしは本書を読んでいたので「おー。ソレやったら知ってるし!」みたいな感じで余裕の笑みを浮かべていたのですが、、、
残念ながらそのトリックというのがこれと違っていて、しかももっとぶっ飛んだ発想で、エレベーターのボタンのパネルの上に階をずらしたプレートを重ねて貼ってあって、それで容疑者が本来とは違う番号を(そうとは気づかずに)押してしまった。というものであったのでした。なんやそれ。

『朱色の研究』では、たしかにアクロバティックな推理を披露し、この混乱に秩序をもたらすのは稀代の名探偵、偏屈学者の火村准教授なのだが、この悲しい物語での核となる繊細で残酷な動機解明の部分において大切な役割を果たしているのは紛れもなく「アリス」だ。
この辺りに関してはわたしはとっても云いたいことがあるので、来週真相が明らかになった時点でゆっくり書きたいと思っています。

がっ!予告を見るかぎりでは、そのへんがなんとなく火村さんの“牙を剥く狂気”や“明らかになる闇”の部分にびみょ~にすり替わっているような気がしなくもないンですけどぉおおおおお?
滅多にない(原作ではね)アリスの見せ場を邪魔しないでくらはい。お願い。

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Posted by K@zumi

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